人文学部長
安酸 敏眞
2011年度は、東北関東大震災の未曾有の危機のなかで始まりました。被災地の大学はもちろんのこと、首都圏の多くの大学も同様に、5月にならなければ入学式すらできない困難な状況下にあります。幸いにも、わたしたちのキャンパスは被災を免れましたが、本学にも被災地出身の約50名の学生がいます。彼らのみならず教職員の家族・親戚・友人・知人などを含めると、沢山の方々が甚大な被害を被っていますので、被災地の痛みや悲しみをわがこととしてうけとめ、厳粛な気持ちで新年度の歩みを始めたいと思います。
ご承知の通り、わが人文学部(1・2部)は、日本文化と欧米文化を学ぶことを通して、みずからの知性と感性を磨き上げ、国内外で幅広く活躍できる人材を育成することを目指して、1993年4月にスタートしました。最初から日本文化と英米文化の2学科体制をとっていますが、開設から丸18年が経過した今、大学を取り巻く環境の著しい変化に伴い、たとい学部の基本理念は変わらないとしても、教育内容全般の見直しとテコ入れが求められています。
カリキュラムに関しては、2005年の大改訂において、四年次の卒業研究に向けて早い時期から段階的に積み上げていくシステムが導入されました。しかし昨今の厳しい就職状況に鑑みると、卒業後のキャリア・プラニングに応じた、より多様で系統立った履修モデルを提示する必要性が浮上しています。できれば創立二〇周年を目処に、新しい時代のニーズに即応したカリキュラム改訂を行なう所存です。
人文学部の科目群は、日本および英語圏の国々の文化について、言語・文学・思想・歴史・社会など、さまざまな切り口で学べるように構成されています。文学や歴史学といった伝統的な学問分野に即して学ぶことはもちろんのこと、既成の学問の枠組みにとらわれない学際的な勉学も可能となるように、履修にはかなりの柔軟性と自由度がもたせてあります。アカデミック・アドバイザーの指導の下に、各自の将来計画にしたがって履修計画を立て、着実に勉学を積み重ねていけば、四年間で相当の力がつく仕組みになっています。
大学は高校までとは違って、既成の知識を教えてもらう場ではありません。むしろ自分で問題を発見し、自分で解決法を見出していく場です。大学の勉学には受験勉強のような単純明快な正解はありません。○か×か△かといった二択や三択ではなく、真理を求めて不断に思考し探究するプロセスに価値があるのです。とくに人文学は人間基礎学ともいうべきものですから、結果がすぐ出るわけではありません。また学びの成果が就職に直結することもあまり期待できません。しかしまさにそこにこそ人文学の面目躍如たるところがあります。昨今はおしなべて実学志向的ですが、人間あっての実社会であり実学です。人文学部は人間を見る眼を養い、持続的な人間力を身につける学部です。今日のような困難な時代を生き抜くためには、まさに歴史に深く棹さした人文的な知に学び直すことが不可欠です。このような先行き不透明な、混迷を究めた時代こそ、人文学部に集うわれわれが高くその灯火を掲げるべきときなのです。
わが人文学部は、その上に設置されている大学院文学研究科ともども、北緯40度圏という北の大地から「新しい人文学」を創成することを、高き理想として掲げています。この理念は「新人文主義」とも表現されますが、いずれにせよわれわれが目指しているのは、人間が人間であるとは何かを根本的に問い質し、新しいメッセージをこの極北の地から全世界に向けて発信することです。この理念に共鳴するより多くの同志の結集と共闘を願ってやみません。
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